風鈴の音色 花火の景色

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「佐智さん! いらっしゃい。」 生垣の向こうから美和さんが庭に入ってきた。 「美和さん、こんにちは! お邪魔しています。」 「久しぶりね。ゆっくりしていって。」 美和さんが私の側に来て、にこにこ笑いながら持っていた籠の中を私に見せてくれた。 「貴志さんがね、佐智さんが大好きだから、とうもろこしを今すぐ持っていけって言うの。」 そこには皮の付いたとうもろこしやトマトが入っていた。 農家を営んでいる、叔父夫婦と貴志兄さん夫婦が作っている野菜だ。 「わー! なんだか、すみません……。でもうれしいです。」 「すぐ蒸すわね。」 美和さんは玄関に向かっていった。 「あ、私も手伝います。」 私も空になったかき氷の器を持って、台所に向かった。 子供の頃、伯父さんがとってくれたとうもろこしの皮を剥くのは子供たちの仕事だった。 「とうもろこしは取ってすぐに調理しないと、味が落ちるからな。」 伯父さんはいつもそう言っていた。
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