風鈴の音色 花火の景色

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美和さんが蒸し器を出してお湯を沸かしている間、私はとうもろこしの皮をむいた。 黄色い粒がきれいに揃っていて、匂いまで瑞々しい。 「おいしそう……。」 思わず呟いた。 「ふふっ。佐智さん、いい表情。」 美和さんが笑う。 「自分たちの作った野菜をおいしいって食べてもらうのって、うんと嬉しい。頑張った甲斐があるわあ。」 私はふと思い出して美和さんに聞いてみた。 「そう言えば……、美和さんって東京出身でしたよね?」 「そうよー。まさか農家の嫁になるなんて、貴志さんに出会ってすぐの頃は考えもしなかったわ。」 「そう、なんですね……。」 少しの間、沈黙が流れる。 そして美和さんが私を覗き込んで小声で聞いてきた。 「……何か、悩んでるの?」 「ええっ!? なんで分かるんですか!?」 大声を出してはっとする。 ……自分でばらしてどうする……。 私の反応に目を丸くした美和さんが、優しい表情になった。 「……おばあちゃんと貴志さんがね。佐智は悩んだり困ったことがあると、うちに来るんだーって口を揃えて言うから。」 しっかりばれてるんだ……。
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