風鈴の音色 花火の景色

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貴志兄さんは私より10歳年上で、私がここに遊びに来た時、うんとかわいがってくれた。 一緒に過ごす時間も長かったから、貴志兄さんと、3歳年上の広志ちゃんと、まるで3人兄妹のようだとよく言われた。 貴志兄さんやおばあちゃんには、私の性格はお見通しなのかも。思わず苦笑する。 私は思いきって美和さんに聞いた。 「……美和さんは、農家にお嫁に来るの、全然迷わなかったんですか?」 蒸し器のお湯が沸いた。 美和さんは蓋を開けて、鍋の上段にとうもろこしを入れる。 「……そうねー。迷ったわ、たくさん。それに不安だった。」 そして鍋に蓋をして、顔を上げて遠くを見ながら思い出すように言った。 「私、虫嫌いだったし。そんなことで農家できるかとか。東京でしか暮らしたこと無かったから、他所で暮らせるのかとか。」 指折り数えながら美和さんは続ける。 「貴志さんの両親とおじいちゃんおばあちゃんと同居でしょ?私は父、母と3人暮らしだったから、大家族なんて想像もつかなくて。挙げたらキリが無いくらい。」 その時のことを思い出したのか、美和さんが苦笑する。 それから優しい表情で私を見て言った。 「……結婚のことで悩んでるの?」 「……はい。実は、そうなんです。」 私は美和さんに話を聞いてもらうことにした。
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