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縁側に座って坪庭を眺めながら、かき氷を一匙すくって口に入れる。
口の中に甘さと冷たさを同時に感じる。
その時、縁側に吊るした風鈴が涼やかな音色で空気を揺らす。
私が食べているかき氷は、手でハンドルを回すタイプのかき氷機で作ったもの。
掛かっているのはイチゴ味のシロップに練乳。
小さい頃、夏休みにおばあちゃんの家に来ると必ず食べる懐かしい味だった。
ここを……母の実家を訪ねたのは、久しぶりだった。
それでもこの懐かしい味はずっと記憶に残っている。
「さっちゃん、縁側暑くない?」
部屋の中で浴衣を広げていたおばあちゃんが私に言った。
「んー。少し暑いけど、これがいいんだよー。」
私は後ろを振り返ってそう言った。
「そうなの? そういえば、さっちゃんはそこに座って何か食べるのが昔から好きだったねえ。」
そしてまた風が吹いて風鈴が鳴る。
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