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毒
目の前に用意された一杯の茶——
陰鬱な隻眼に見つめられた青年は、
「いただきます」
そう断りを入れると、迷うことなく茶を喉へ流し込んだ。
それと同時に口元に痺れが走り、やがて燃えるような激しい痛みが全身を襲った。
「ぐ……っ!」
喉に手を添え、必死で息を吸い込むものの
胃から上ってくる血が気道を塞ぎ、意思とは真逆に吐き出す動作しか叶わない。
「あ……に、うえ……」
片手で畳の井草を掴み、もう一方の手を兄の方へ伸ばす。
「う……うぅ……っ」
青年はやっとのことで兄の着物の袖を握り締めると、
段々と重くなっていく目蓋を必死で持ち上げ、彼を見上げた。
——兄は、形容し難い表情を浮かべながら
弱っていく弟の姿を見下ろしていた。
睨み付けているような、悲しんでいるような、
あるいは驚いているような視線は
その隻眼を見慣れているはずの青年にさえ
心を読み取ることの出来ない表情だった。
「どう……して……」
それが、青年の最期の言葉となった。
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