愛姫

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凛太郎はそう言うと、天音に視線を移した。 「——俺は……今まで、なぜ自分が殺されなければならなかったのか、という疑問と悔しさから あなたと共に真実を探し続けてきました。 ですが……この真実を知ることができて、俺の感情には変化が起こりました」 「……え……?」 「政宗は、歴史を創るために生きることを世の中から求められた存在でした。 『俺』がもし政宗の代わりに生き、当主となっていたとしても 政宗のように戦で采配を振るい、革新的な領地改革に踏み出し、多くを生み出すことはできなかっただろうと思います」 「それは……結果論だと思います。 小次郎が生きていたら、小次郎がきっと素晴らしい政治をしていたと思います」 天音が庇うように言うと、それでも凛太郎は首を振った。 「いえ。俺は政宗でなければなし得なかったことが多くあると思っています。 だから——『俺』の命を以て『あなた』の命を護れたのは幸いなことです。 死の直前まで、『俺』は『あなた』を心から慕っていました。 そして死後に、『あなた』ではなかったことを知れて、俺は今……嬉しい」 「……さっきから、『私』の存在を忘れて 感動に浸っているようだけど」 その時、地面に座り込んでいるアリサの恨めしそうな声が聞こえてきた。 「悪いのは全部、この女でしょう?! 前世で『私』に初対面の頃から冷たく接してきたのは政宗だし、 先にこちらの命を奪おうとしたことがあるのも政宗! そして現世は現世で、私の方がずっと前から凛太郎と愛し合って来たのに この女が横から掠め取って行って——」 「掠め取ってなんか、いません」
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