愛姫

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「アリサさん……」 天音はどう言葉をかけて良いか迷ったが、 最初に出てきたのはこのような言葉だった。 「私も凛太郎さんからは、ずっとストーカーだと思われていましたよ」 「……」 「私はずっと、同じ図書館のスタッフとして接点のあるアリサさんが羨ましかったです」 「……」 「私がアリサさんを羨んでいたこと、アリサさんは知らないですよね?」 天音が言うと、アリサは何も答えなかったが 静かに話を聞いていた。 「……私は昔から、自信のない性格でした。 自分なんかが声をかけて相手を不快にさせないかと心配するあまり積極的に人と交流できなかったですし、 オシャレして周りに笑われたらどうしようという不安から、 ごく平均的な見た目になるようメイクや服装はいつも無難なものばかり選んできました」 「……いきなり自分語り」 アリサは吐き捨てるように言ったが、天音は 「そう言わず、もう少しだけ付き合ってください」 と彼女に頼んだ。 「——そんな性格なので、アリサさんが積極的に凛太郎さんにアプローチしていたり オシャレして、お菓子作りなど頑張っている姿を目にして思ったんです。 アリサさんは自分の好きなことのために、一生懸命になれる人なんだなって。 私が周りの目を気にしていたり、傷つきたくなくて行動に起こさないのに対して アリサさんは前向きに生きているのが眩しく見えて……。 最初はちょっと言い争ってしまったこともありましたけど、 私は、アリサさんみたいな人と友達になれたら嬉しいな、って思っていました」
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