愛姫

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天音が言うと、アリサは深く息を吐き出した。 「……私は、あなたが嫌い。 前世でも、『あなた』は私との関係を改善するために自分から積極的に努力しようとはしなかったし、 現世でだって、ただ成り行きで凛太郎と上手くいっただけじゃない。 自分でも何の努力もしていないと認めているような人と、 私は友達になんかなりたくない」 「……そう、ですよね」 アリサの返事を聞いた天音は、少し寂しそうにそう言った。 「アリサ。あなたが求めていることではないとは心得ていますが—— 俺は、あなたと友人という関係であれば、そうなりたいと望んでいます」 天音とアリサが無言で沈んでいると、 そこでようやく、凛太郎が口を開いた。 「あなたが俺と恋人関係でいるために、様々な努力を重ねてくれていたことは知っています。 俺にスカートとズボンどちらが好きかと問い、どちらかといえばスカートだと答えてからは あなたはいつもスカートを履くようになりましたし、 学業とバイトで忙しい中、練習してクッキーを焼いてくれたことも嬉しかった。 アリサが努力家で健気な性格だということは あなたが図書館スタッフとして働き始めた頃から知っていたつもりですし、 そんなあなたと友人関係になれるなら、俺は嬉しいです」 凛太郎がそう告げると、アリサはやや驚いたように目を見開いたが、 やがてどこか切ない表情を浮かべた。 「……そんな風に、前から私のことを認めてくれていたのに…… それでも、あなたの恋愛対象になることはできなかったのね」
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