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国際関係学を専攻する大学3年生・安達天音は
大学附属の図書館を訪れるのが日課だった。
元々読書好きの彼女は、大学入学当初から頻繁に図書館を利用していた。
はじめこそ図書館の自習スペースで本を読み、
ついでに授業の課題も終わらせていたのだが
ある時を境に、本はその場で読むのではなく
必ず貸し出しで自宅に持ち帰るようになった。
そのきっかけこそ、カウンターで粛々と手続きをしてくれた司書・伊藤凛太郎の存在である。
他の愛想の良い司書や大学生アルバイトスタッフと違い
手続き中も一切にこやかな応対はせず
まして世間話など決してすることのない彼に
天音は密かに思いを寄せており、
彼と少しでも関わりを持つために、必ずカウンターに立ち寄り本を借りることが習慣となっていたのだ。
そんな訳で、彼が居ない時に応対してくれるスタッフ達は
わざわざ重い書籍を沢山抱えて帰る天音を見て
彼女が紙の本を好むタイプだと信じて疑わない。
実際はバイトのお金を貯めて最初に買ったのが読書用タブレットという程、
天音は専らの電子書籍派だった。
小説も漫画もほとんどをタブレットで読んでいるものの、
それをスタッフに悟られることの無いほど
天音は頻繁に紙の本を借りていたのだった。
——図書館を出た天音は、次に学生食堂へ向かうと
軽食を適当に購入し、ずっしりとしたトートバッグをテーブルの脇に置いてタブレットを取り出した。
そして食事がすっかり冷めてしまったことにも気付かぬまま、タブレットで読んでいる小説の内容に夢中になっていた。
「——その行動、何か意味あるんですか」
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