27人が本棚に入れています
本棚に追加
すると凛太郎は、ぽかんと口を開けつつ
「……それ、『持ってる本をわざわざ借りた』ことの理由になってます?」
とややあってから返した。
「……本って……、どんなジャンルが好きかってだけでも、人となりがなんとなく分かるじゃないですか……。
だからどうせなら、適当に選んだ本じゃなくて
自分が読んで面白かった本を借りようと思ったんです。
伊藤さんに……遠回しにアピールしたくて……」
顔から火が出そうな思いでそう告げると、
凛太郎はふうっと息を吐き出し、
「ここ座っていいですか」
と言って定食の載ったトレーを置くと、天音の隣の席に座った。
伊藤さんが、こんな近くに居るなんて……!
天音は恥ずかしさと嬉しさで胸が張り裂けそうになりながらも
凛太郎が次に何を言うのかと待っていると——
「それストーカーって言うんですよ」
「……はい?」
「うちに置いてる本が借りたくて図書館に通ってた訳じゃないんでしょう?
しかも三年近く……俺目当てに通っていたと」
そう言いながら凛太郎は定食に箸をつけていく。
その後も黙々と食事している凛太郎に
天音は呆気に取られながらも、小さな声で
「……ご迷惑をおかけしました……」
と謝った。
「確かに、私のしていたことは立派なストーカーです。
自分でもこんな行動取るのは初めてで——
きっと周りが見えなくなっていたんだと思います。
だから……もう、図書館に行くのはやめます」
ああ、私の恋は終わったんだ——
好きな相手にストーカーだと言われたら、
もう会いに行くことなんてできないよね……
天音がしょんぼりしながら荷物をまとめようとすると、凛太郎はようやく定食から顔を上げた。
「……別に、迷惑なんて言ってません」
最初のコメントを投稿しよう!