図書館で

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「へ……?」 天音が驚いて横を向くと、凛太郎は魚のフライを口に詰め込んでいる最中だった。 「あの……迷惑じゃない、って?」 「何か実害あった訳じゃないですし。 でも、気になるんで教えてください。 ——なんで俺のこと、そんなに気にかけているんですか?」 「っ……、それは……」 天音は、図書館に通い始めて間もない頃の出来事を素直に話して聞かせた。 この大学図書館では、フリースペースを利用して 『スタッフのお勧め』なるコーナーが設けられている。 そのコーナーでは司書やアルバイトスタッフが 毎月交代でお勧めの本を紹介しており、 その棚に陳列されている本を手に取ることができた。 天音は時折このコーナーに立ち寄っていたのだが、 その陳列が好みのど真ん中な時期があった。 ミステリやホラーなど、自分の好きなジャンルが取り揃えられた中でも クローズドサークル系だったり、山奥の廃村が舞台だったりと とにかく自分の好みをトレースしたかのような選定で 既読の作品も多くある中、自分の知らなかった作品の紹介もされており 天音はそこに陳列されていた本すべてを読了したのであった。 天音はそれ以来、何度もこう思うようになった。 こんなに本の趣味が近いスタッフさんがいるなんて…… 今月の担当スタッフさんは何て人なんだろ……?
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