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それからの俺は荒れた。
荒れたところで、それを許してくれ、『しょーがないなぁ、唯人は。』と笑ってくれるカナメはどこにもいなかった。
これくらいのことでなんで勝手にいなくなるんだ、ってカナメに対する怒りを抑えることができなかった。
荒れて飲んだくれてどうしようもなくて。
大学の単位はギリギリだったけど、それすらどうでもよかった。
時間が経つごとに、怒りは悲しみと激しい後悔に変わって俺を苦しめた。
カナメ。カナメ。カナメ。
一晩中名前を呼び続けたところで、あの愛しい姿が戻ってくることはなかった。
「少しは懲りた?」なんて笑いながら帰ってくるカナメの夢を何度見たことだろう。
目が覚めて夢だとわかった時の絶望感は
耐えられたものではなかった。
なんで?
カナメは俺の運命の人なんだろ?
何度も何度も心の中で問いかけては、虚しさが募った。
一年が過ぎ、二年が過ぎても想いは募るばかりだった。
そっちがその気なら俺だってお前を本気で捨ててやる。
そんな風に意気込んで付き合った子も、余計にカナメをどれだけ忘れられていないかを思い知っただけで終わっていった。
三年目からはもう、誰かから告白されても、
「好きな人がいる。」
と言って断り続けるようになった。
就職し、新しい世界に出ても、心はいつもカナメといたあの頃に囚われていた。
カナメは運命の人だから、と自分に言い聞かせ続けた。
カナメにもう一度会えたら、そんなことばかりを思っては自分を慰めていた。
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