きみは、運命の人だから。

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最初の浮気を知った時、僕は取り乱して泣き続けた。 悔しくて、苦しくて、相手を罵って、彼に縋った。 彼が好きで仕方なくて、彼が僕のところに戻ってきてくれるように、何でもした。 浮気される自分に原因があったんだ、なんて本気で思っていた。 二回目の浮気を知った時は、彼に対して怒りが湧いた。 一回目の浮気以降僕は、彼が余所見なんてしなくていいように彼の望むことならなんでも叶えてきたのに、何が不満なの!?って怒りしかなかった。 さらに腹が立ったのは、最初の年下で可愛かった浮気相手と違って、相手の男が僕よりも彼よりも年上で、特にこれといった顔立ちもしていなかったことだった。 怒る僕に謝り倒して優しくなった彼に、つい絆され、また許してしまったのがそもそもの間違いだった。 三回目の浮気の時は、もう怒りすら湧かずにただ呆れるだけだった。 そこでようやく、あぁ、僕は彼の運命の人なんかじゃないって気づいたんだ。 もう驚いたりなんかしないと決めていたのに四回目の浮気で動揺したのは、その相手が可愛い女の子だったからだ。 二人並んで腕を組んで、彼の唇が何か囁くみたいに彼女の耳元に寄せられて。 少し顔を赤くした彼女が彼を見上げたら、彼はその唇に自分の唇を寄せた。 息をするみたいに「もうしない。」って嘘をつく、その唇で。 女の子がいいって言われたら、僕にはどうすることもできないんだ。 どれだけ彼の好みに近づきたいって努力しても、それだけは叶うはずもないんだ。 わかっているくせに。 その時だけは悲しくて悲しくて、涙が止まらなかった僕に、彼はなぜか少しだけ満足そうな顔をしているような気がした。 心が少しずつ、音を立てて壊れていく音がした。
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