きみは、運命の人だから。

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唯人のことはずっとずっと好きだった。 家が近く、幼なじみで、小中高と一緒に育った。 初めて人を好きになるという気持ちを知った相手が、唯人だった。 背が高くて、芸能人みたいにカッコ良くて、スポーツができて、勉強もまぁまぁで。 どこかちょっと悪い雰囲気もある唯人は、いつだって僕の憧れだった。 幼なじみの僕に常に優しくしてくれて、少し引っ込み思案だった僕の手をいつも引いてくれた。 僕にないものをたくさんたくさん持っていて、唯人はいつも、僕を惹き付けて離さなかった。 どのくらい前のことだろう。 まだ小学生くらいの僕たちが交わした他愛ない会話を僕は凄く覚えている。 「なぁ、運命の人って知ってる?」 「運命…?」 「そ。運が命じるって書くの。魔力みたいに強い力で惹かれ合って、どうしようもないくらいに絡まりあって結びつく人だって。絶対にいるんだって。」 「…そうなんだ。」 占いの広告か何かで目にしたのだろうけど、キラキラした目でそんなことを話す唯人に、幼かった僕の心はとてつもなく惹かれたのを思い出す。 唯人の運命の人。 それが僕だったらいいな、なんて淡い気持ちはそれからずっと心の中にあった。 大学が別々になるとわかっていた高校卒業の日、10年以上膨らみ続けたそんな気持ちに区切りをつけるために唯人に告白した。 唯人が何人もの女の子と付き合ってるのを傍で見てきたし、気持ち悪いなって思われるのも、もう二度と唯人に会えなくなるのも、覚悟の上だった。 唯人の運命の人が僕だったら、なんて抱き続けてきた微かな夢も一緒に絶ち切るつもりだった。 なのに。 「…知ってた。」 唯人からの返事はそれだけで。 気づけば唯人の唇が僕の唇を塞いでいた。 桜の舞う、校舎の裏。 一生分の奇跡を使い果たしたと本気で思ったんだ。
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