きみは、運命の人だから。

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〈side 唯人〉 幼なじみのカナメの気持ちに気付いていたのはいつの頃からだっただろうか。 そして、同時に彼を独り占めしたいと思う、自分の気持ちを強く確信したのも。 いつも、俺の傍にいて、俺の陰に隠れて、俺だけにその笑顔を向けていたカナメ。 いつしか熱の籠った視線で俺を見ていることに、本人はいつから気付いていたのだろうか。 引っ込み思案で奥手なカナメがそれを俺に伝えてくるなんてことはなかなかないだろうな、と思ったから、その気持ちを煽るためにこれみよがしに彼女を作って見せた。 その時の切なげな、寂しげなカナメの表情はいつも堪らなく胸を高鳴らせた。 大学も同じところについてくると当然のように思っていたのに、カナメが違う医療系の大学に推薦で行くことに決まったと知ったときは驚きと衝撃で、それから、微かな怒りすら湧いた。 カナメは俺から離れるつもりなのか? そんなことを許すつもりはなかった。 そこから高校を卒業するまでは、カナメに特別優しく接した。 絶妙にカナメの嫉妬心を煽ることも忘れず、それでいて受験勉強を理由に卒業までの数ヶ月は恋人を作らずにいた。 カナメから想いを伝えやすくさせたつもりだった。 …そうして卒業式の日。 頬を染めたカナメが、遂に一生懸命俺に想いを伝えてきた時の高揚感といったらなかった。 愛しくて、愛しくて、愛しい。 桜舞う中で頬を染め、苦し気に気持ちを紡ぐカナメの姿は、この世のものとは思えないくらいに美しかった。 初めて触れたカナメの唇は、今までのどの女の子とのどんな深いキスよりも、胸を昂らせた。
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