蒼響ライオット

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放課後。 三階に上がると、一番端の第1音楽室からギターやドラムの音が響いていた。よく兄が好んで弾いていた、海外のメジャーなロックバンドの曲だ。 「失礼します」 扉を二度ノックする。 恐らく音に掻き消されて、届いてはいないだろう。 ガラリと、扉を開けると一番にドラムを叩く人物が目に飛び込んだ。光吉だ。 「あれー! 砂川じゃん!」 光吉の声に、椅子に腰掛けてギターを弾いていた2人がこちらに振り向く。 1人は知らない顔だ。この時期だから多分2年だろう。あともう1人は、今朝のロン毛の先輩。 「おぉー、弟くん、こっちこっち」 ロン毛の先輩が嬉しそうに手招きした。 「はあ……」 言われるがまま、音楽室に足を踏み入れる。 顎ラインまであった先輩の髪は、一つに結ばれていて、朝見た時よりも幾分か真面目そうに見えた。 もう一人、椅子に座っていた黒髪の先輩は僕のことを不審そうにじっと目で追っている。 「で、なんですか、渡したいものって」 ロン毛の先輩は椅子から立ち上がると、窓際に置いていたペチャンコの鞄から、紙の束を取り出した。 「これ、部長から弟くんに」 「は?」 差し出されたのは、タブ譜と呼ばれるギターコードが書かれた楽譜だった。 「ちょっ! 仁志(にし)、それ!」 僕を不審そうに見ていた黒髪の先輩が立ち上がる。ドラムセットの後ろでは光吉が顔を強張らせていた。 「いいんだって。そもそも部長がいなきゃ、この曲やる意味ないっしょ」 仁志と呼ばれたロン毛の先輩が、ヘラッと目尻を下げる。 「でもそれは部長のためにっ!」 黒髪の先輩が声を張り上げ、僕は2人の会話についていけず眉を顰めた。 「あの……どういう……」
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