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「ところで、気になったのが、このタイトルですが。これはどういう意味があるのですか?」
舞台の上を歩き出した時、客席から一際大きな声が聴こえて、泣いてしまいそうで思わず息を止める。
「頑張れ、蒼くん!」と叫んだその声は、浪川のものだった。
「あぁ、このタイトルは砂川部長が大好きな弟さんと、自分の名前を入れたものなんですよ」
「なるほど。その砂川部長の弟さんですが、実は今回、特別に予餞会ライブに参加してくださるんですよね!」
「はい。もう、めちゃくちゃ頑張ったので、ぜひ卒業される先輩、在校生の皆さん。そして……砂川部長も、しっかり聴いてやって欲しいです」
ポケットに手を入れる。
通話のままにしておいたスマホを、指で二回ノックする。
通話口の向こう側で、待機してくれている母が、スマホから流れるライブ音を兄の響に聴かせてくれる手筈だった。
「それでは聴いていただきましょう! 予餞会最後の楽曲は────」
可能性は無限に無いとしても。
この音楽がまだ中途半端だとしても。
僕たちの流した涙は、無駄になんかしない。
「蒼響ライオット!」
受け取れ、くそ兄貴!
fin
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