雪雲エレジー

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「ま、待って、砂川っ!」 歩き出した僕の横にピタリとくっついてくる光吉って、犬みたいだ。小型犬。キャンキャン煩くて、音楽だって単に音が鳴ればいいくらいの考えしかないのだろう。 「まだ何か用?」 「さっきの話本当かよ……俺、いきなりそんなん聴かされても、マジで、受け入れらんないって……」 「8パーセント」 「え?」 「兄さんが目覚める確率。8パーセントだって。こんなの……」 0パーセントって言われた方が、なんぼかマシだった。 「いや、でもさ! 分かんないだろ? 人間の可能性ってのは、無限に」 「あるわけないじゃん」 「お、お前さあ……んなこと言うなよぉ〜」 光吉が泣きそうな顔で僕の横を必死に付いてくる。僕はそんな光吉を振り切りたくて、だけど走るのも面倒で、だから背負っていたギグバッグを下ろして光吉に押し付けた。 「はい」 「え、ちょっ」 「光吉にあげるよ」 「は? 待てって、これ、でもっ」 「僕はいらないから、光吉が貰って」 無理だと首を振る光吉に押しつけた黒いバッグの中身は、もうきっと、誰が弾こうと同じなのだから。 「砂川待っ」 「じゃあね。それ、よろしく」
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