58人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
「ま、待って、砂川っ!」
歩き出した僕の横にピタリとくっついてくる光吉って、犬みたいだ。小型犬。キャンキャン煩くて、音楽だって単に音が鳴ればいいくらいの考えしかないのだろう。
「まだ何か用?」
「さっきの話本当かよ……俺、いきなりそんなん聴かされても、マジで、受け入れらんないって……」
「8パーセント」
「え?」
「兄さんが目覚める確率。8パーセントだって。こんなの……」
0パーセントって言われた方が、なんぼかマシだった。
「いや、でもさ! 分かんないだろ? 人間の可能性ってのは、無限に」
「あるわけないじゃん」
「お、お前さあ……んなこと言うなよぉ〜」
光吉が泣きそうな顔で僕の横を必死に付いてくる。僕はそんな光吉を振り切りたくて、だけど走るのも面倒で、だから背負っていたギグバッグを下ろして光吉に押し付けた。
「はい」
「え、ちょっ」
「光吉にあげるよ」
「は? 待てって、これ、でもっ」
「僕はいらないから、光吉が貰って」
無理だと首を振る光吉に押しつけた黒いバッグの中身は、もうきっと、誰が弾こうと同じなのだから。
「砂川待っ」
「じゃあね。それ、よろしく」
最初のコメントを投稿しよう!