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「陳腐ね」
今日も今日とて遠慮のない批評が与えられる。
あの出来事から彼女が素直に泣けるように小説を書き始めたものの厳しい評価は開始した時から一切変わらない。
二月の気温も相まって彼女の冷たい感想に震える。
返されたノートと清水を交互に睨みながら言う。
「俺はどんな卑怯な手を使ってでもお前を泣かせてやるからな」
「泣かせたいなら無理よ。両親との死別以外は泣かないから」
……でも、それも無理かなぁ。
清水が白い吐息をふうっと吐く。
「私、親より先に死んじゃうかもしれないし」
「……なんで」
「私は小説家になる前に、物語をたくさん創るけど、ネタ探しに憔悴してダイナミックな自殺してそう」
「それも小説のネタか? 笑えないぞ」
「想像にお任せするわ」
「お前、そういうところ直した方がいいぞ。ズレてるっていうか面倒くさいし理解出来ない」
「君は私のことなんて何も分かってないのよ」
「あーそうかよ!」
俺はノートを利き手で潰れるほど強く握り締め、一人学校へ向かった。清水をその場に残して。
どうしてそんなことを言う?
俺の腕が上がらないから見切りをつけたとか?
それ以来俺は清水と話すことはなくなった。
そして季節は春。
三月の卒業式に俺と清水は対峙した。
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