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すい・・・
すい・・・
「ん?」
ウミガメのマークスは、目の前に黒い巨体をうねらせて1匹のシャチが泳いでいるのを見付けた。
「おーい!!シャチ!!そこのシャチ!!」
すい・・・
すい・・・
「シカト?」
ウミガメのマークスの呼び掛けを無視して、巨大なシャチは大きな尾鰭をくゆらせてどんどんと大海原の中を泳いでいた。
「おい!シャチ!!こっちが呼んでるのにシカトこいて逃げんなよ!!」
シャチに無視されて激昂したウミガメは、渾身の力を込めてシャチの尾鰭に体当たりした。
どかっ!!
「うるさいわねっ!!」
シャチは尾鰭をウミガメに振りかざした。
「おっと!!」
ウミガメはシャチの振りかざした尾鰭をヒラリと交わすと、シャチの目の前に立ち塞がった。
「あのーー!!シャチ!!ずっと聴きたい事があって呼んでたんだけど?!」
「何よカメさん?それに、私は『シャチ』じゃなくて『タマフ』よ?」
「ああ、シャチの『タマフ』さん。マングローブの森がいっぱい生えてる海が青くて美しい海岸って、何処にあるん?」
「・・・・・・」
ウミガメの問いに、シャチは黙ってしまった。
「だ・か・らぁ、マングローブの森が・・・!!」
黙りこくったシャチのに、ウミガメはイライラして声をあらげた。
「・・・・・・だめだよ。そこ、行っちゃ。」
「何でだよ?!行っちゃ悪いかよ!!」
「兎に角・・・駄目なんだ・・・」
「駄目だ駄目って・・・!!何でマングローブのある海岸に行っちゃ駄目な理由を教えてくれ!!シャチ!!」
「あそこは・・・もう・・・だめだ・・・」
「何で駄目なのか聴いてるのに!!その『駄目』な理由を!!」
「じゃあ・・・本当に何で駄目なのか・・・お前の命にも関わるよ・・・」
「大丈夫さ!!俺は不死身のウミガメのマークスだ。」
「本当にいいの・・・?後悔しないでね・・・絶望もしないでね・・・」
「無論ですよ!!・・・って、何でそんなこと言うんだ?シャチ。」
「行けば解るわよ・・・はぁ・・・」
シャチのタマフは頭の穴でタメ息をつくと、ウミガメのマークスに渋々マングローブの海岸の在りかを教えて、「もうやだ・・・もうやだ・・・」と呟きながら、その豊満な巨体をうねらせて泳いで去っていった。
「何だか解らないけど、マングローブの海岸の在りは解った。さあ行こう。」
ウミガメのマークスは海面に昇ると息継ぎをして、シャチのタマフの教えた通りの方向へ、胸を弾ませて泳いでいった。
「早くドードーさんに逢いたいなあ。」
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