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<第二十七話・相談>
事態が切迫しているのはわかっている。だからこそ、ただ村から逃げるだけでは無意味なことになっていただろう。
サービスエリアで休むと同時に、武藤は本部に再び連絡を入れにいったようだ。結局単機突撃してしまった彼である、きっとこっぴどく上から叱られていることだろう。それでも彼が危険を犯してでも村の中に入り、鬼殿完三郎の書籍を持ってきてくれなければ――自分達は壷鬼の正体を知ることも叶わなかったのだ。とにかく、感謝せねばなるまい。
――時間がない。もう、ほとんどカウントは残ってないんだから……!
薫は唇を引き結び、サービスエリアーのベンチで本をめくり続けていた。瑠奈も不安げに手元を覗きこんでいる。
刑事二人の様子がおかしいので問い詰めたところ、“4”の犠牲者が既に出ていたことを知らされた。死んだのは、市役所職員の松田雄一郎。坂口甚太の遺体の第一発見者である職員の片割れだった。これで、残る犠牲者は三人。下手をしたら今日中死者が出ることも十分に考えられることだろう。
『薫にさっき送ってもらったらしい写真だが、残念ながら俺には開くことができなかった。どうやら俺は壷の写真を見ることもできないらしい。……俺が見ることもできないものっていうのは、基本的に見るだけでも害になるタイプの怪異であることが多いんだ。俺はただ霊能力者というだけではなくて、少々強いものが“憑いている”タイプの能力者だからな』
耳にはイヤホン。サービスエリアまで来てからやっと、兄と電話が繋がったのである。メールも何度か送ったが、半分以上が宛先不明で返ってくるという現象が起きていた。どうやら霊的な原因があるらしい。霊障だとしたら、それを起こしているのが壷鬼なのか、はたまた兄の守護霊であるのかは微妙なところであるが。
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