<第二十七話・相談>

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 兄は“見る”ことに非常に長けた能力者であるが、本当にまずい怪異の場合彼は遠ざけられてしまう傾向にあるのである。瑠奈からもらった“壷”の写真を兄に見てもらえれば何かわかるかと思ったが、写真のデータを添付するとことごとくエラーが起きるらしかった。サイズ的には問題がないはずなのに、ファイルが開けない。――以前にも、似たようなケースはあった。彼が遠ざけられてしまうタイプの怪異は、それこそ“神”クラスの災厄であることが多いのである。つまり、兄の手にも負えないような恐ろしい事態、ということだ。 『俺が遠ざけられるほどの怪異に、お前が対処できるとは思えない。できることなら今すぐそこから逃げて欲しいところだけどな。……その様子だと、既に巻き込まれて逃げられる状況ではなさそうだな』 「兄貴、壷鬼を封じる方法はないの?破断が完成したら何が起きるか、それについてはどこを探しても記述がないんだよ。世界が破滅するクラスの災厄らしい、とは言われているけど……!」 『落ち着け。写真もない、電話だけの情報じゃいくら俺でも分かることに限界がある。お前が持っている本にはなんて書いてあるんだ?』  焦っていては、見える真実も見えなくなる。薫は深呼吸して、どうにか今までの経緯と、本に記述されていた壷鬼の正体などに関してを兄に語った。壷鬼となった存在のオリジナルが、どうやら鬼祀村の有力者の娘である茅ヶ崎亜希子であったらしいこと。茅ヶ崎亜希子とその娘、恋人の肉と意思が混ざり合って強大な怨念を作ったらしいということ。彼女らの目的は、自分達が受けた苦しみや痛みを誰かに思い知らせることであろうということ。  そして、破断のための生贄になる人間は恐らく百人はくだらないだろうということと――それにより村が滅び、壷を見た人間が次々と犠牲になっているということである。 「前に破断が起きた時は、村の人たちが元凶となる村長達を茅ヶ崎亜希子と同じやり方で処刑し、生贄に捧げることで収まったって本には書いてあった」
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