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『破断を止めるため、まずは村の総意で亜希子を殺した首謀者である村長と亜希子の父が処刑された。彼女と同じようにミキサーにかけらて生きたまま挽き肉となったのである。彼らの断末魔が響き渡り、さらに彼女を殺害するのに手を貸した者達が次々と同じやり方で処刑され――漸くそこで、破断は止まったのだった』
「けれど、流石に同じやり方を今回用いるわけにはいかない。生贄なんて出せないっていうのもあるし……そもそも村の人達がみんな破断に巻き込まれて死んでる。今回怒りを買ったであろう、鬼殿完三郎も死んだはず。生贄に差し出せる人間もいない……!」
そもそも、以前と今回の怒りは異なるはずだ。茅ヶ崎亜希子が祟りを起こしたのは、鬼殿が己の命可愛さに無関係の人間を身代わりにしようとしたことに他ならない。己が指名した人間ではない人間にすげ替えようとしたことは当然、己が敬われていない結果だと亜希子は感じたはずだろうし――同時に、別の人間に苦痛を押し付ける人の愚かさに心底失望したのも間違いあるまい。そのせいで、人を全て滅ぼすのもやむなしと考えるようになってしまったのかもしれなかった。だとしたらもはや、亜希子が恨んでいるのは鬼殿完三郎個人ではなく、人間という愚かしい生き物全てということになってしまうだろう。
人間の罪を、命以外で償う方法があるだろうか。
生贄を捧げる以外で、亜希子の魂を鎮める方法を見つけなければ――自分達に、恐らく未来はない。
「村にいた、神主さんは言ってたんですよね。茅ヶ崎亜希子を鎮めるには、生贄を定期的に捧げるしかないと。特に、自分が妊婦であったことから……村に妊婦がいると、ほぼ確実に生贄に選ばれていた、と」
瑠奈が、青ざめた顔で本の文字をなぞる。スピーカーにしてあるので、焔の声は彼女にもしっかり聞こえているはずである。
「……酷い話です。生贄候補を絞るために、一時期の村では村の女性を片っ端から妊娠させて、他の人の生存確率を上げる試みがなされていたって。妊婦さんがいれば、他の人はほぼ確実に生贄にならないから……」
「あんたのお祖父ちゃんが、鬼の村だって言ったのもわかるよ。鬼畜の所業とはまさにこのことだね。……確かに妊婦を生贄に捧げれば、亜希子は満足するのかもしれないさ。けど、それで破断を止めたってどうなるんだよ。結局その後も断続的に生贄を捧げなければ元の木阿弥じゃんか」
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