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――駄目だな、これ。余計なこと考えはじめたら、ループ止まんないや。
コンビニでも近くのスーパーでも、なんでもいいから出掛けてみた方がいいかもしれない。やや重い体を叱咤して、薫はベッドから起き上がった。
世間一般の男子諸君の夢を壊しそうだが、外に出掛ける予定がないと、往々にして女子は残念な服しか着ないし髪の毛はぼさぼさである。今日なんて、服装はくたびれた灰色のジャージと来たものだ。中学時代ににょきにょきと背が伸びてしまったことで、なんだかんだ特注になってしまったLサイズを未だに自宅でも着ているのである。これがまた、古くなっても暖かくて動きやすくて着心地が抜群なのだ。
洗面所に行き、鏡の中の自分を確認して苦笑いする。完全なるボンバーヘッド――なんてことを言っても今の子供達はわかるだろうか。一昔前のCMで見たような爆発頭を見つめ、これを矯正するにはどれだけ時間がかかるだろうかと考える。とりあえず濡らしてスプレーとアイロンは必須かな――なんてことを考えていた時だった。
「あ」
ポケットにいれたまんまにしていたスマートフォンが、テロテロ~と妙に軽快なメロディーを奏でる。大好きなアニメのOP曲だった。メールの着信、珍しいな――なんてことを思いながらタップする。そして、何故その相手が手軽なLANEを使わずにメールを寄越したのかすぐに理解した。
単純明快、LANEのIDを交換していない相手だったのだ。そもそも、彼女と交遊があった高校時代、薫はまだガラケーを使っていたのである。新しいものに飛び付くより、ガラケーのボタンの使用感を気に入っていたがゆえに。
――藤岡瑠奈ちゃん……?珍しいな、どうしたんだろ。
そして。
メール本文を開いて、薫は眉を潜めたのである。
それは彼女の母方の祖父が、変死したことに絡む内容であったのだ。
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