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カウントダウンが始まると、後ろでイライラが始まる。
そしてそれに比例する私の焦り!
あ、またマウスがすべった!
「そこじゃねーだろ!
その数値はこっちだ!」
とたんに飛ばされるお叱り。
結局、1分前に何とか入力を終え、私は腰が抜けそうだった。
し、心臓に悪い。
「おい、藤波!」
「はいいっ」
脱力していたところに声をかけられたので、ビクッとして背筋を伸ばす。
「もう少し早く仕上げられるようにしろよ」
ネクタイを締めながら(事務所ではクールビズのためノーネクタイ)、浅井主任が私を見て言った。
「も、申し訳ございません」
言い訳をするなら、本来はとうに仕上がっていた書類だった。
だけど、営業で手土産にするお菓子を買ってきてと頼まれてしまい、それがまた離れたお店の商品だったもので、往復で時間を取られてしまったんだ。
だけど、そんなに急ぎなら私に頼まずに自分でやればいいのに、と思ったのが伝わってしまったんだろうか。
仕上がった書類にもう一度目を通してから封筒にしまいつつ、今度は目線を向けずに彼が言った。
「藤波に頼むとミスがないからな」
とたんに、ドキンと揺れる胸の内。
ほらね、こんなにも簡単に、彼の言葉は私を揺さぶってくるんだ。
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