鬼と私の攻防戦から始まる序章

2/4

144人が本棚に入れています
本棚に追加
/206ページ
わかってる。 主任(おに)に頼まれたのが優先だからと断るべきだった。 でも、課長や他の人たちは基本、私の言葉は聞いていない。 「ハケンさんには時給分、しっかり働いてもらわんとな」 「ハケンでもこれくらいできるでしょ」 などと言って、雑用は全て私。 雑用だって大事な仕事だ。 それはわかる。 でも、派遣社員ってこういうものなの? 低く扱われている気がしてモヤモヤする。 だから、主任が見積書の作成を私に頼んでくれたのは、すごく嬉しかったのに。 私にもこういう責任のある仕事を任せてくれるんだって。 それをきちんと出来なかったのは私のせい。 主任、呆れただろうな。 ハーッとでっかいため息をついて、私は社屋を出て角を曲がったところにあるいつものベンチに座った。 昼休みには時給が発生しない。 だから12時から13時まではしっかり休む権利がある。 わかっていても、バッグに入っているお弁当を出す気になれなかった。 主任、お昼食べたのかな? 一度気になりだすと、落ち着かなくてそわそわしてしまう。
/206ページ

最初のコメントを投稿しよう!

144人が本棚に入れています
本棚に追加