渡る世間に鬼が笑う

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「は?ホウキョウシュジュツ?……って、胸かよ?!」 やっとピンと来たらしく、彼の視線が私のささやかな胸に向けられた。 とっさに腕で庇うようにすると、慌てて目をそらす。 「何をいきなり言い出すんだ?」 「やっぱり、恭介さんもボンキュッボンの方が好きですよね?」 「好きだけど、いや、好きじゃないッ。 つーか、俺はお前の胸が好きだ!!」 エヘン、と咳払いの音がして、気まずそうに初老の男性が私たちの横を通り過ぎていった。 宣言は嬉しいけど、かなり恥ずかしい。 「ど、ども、アリガトゴザイマス」 「ど、どういたしまして」 気まずい沈黙を振り払うように、ガシガシと頭をかき上げながら恭介さんが言う。 「何でいきなりそんなことを言い出した?」 「だって、恭介さんが何か言いにくそうにしているから、胸が足りないとか、不満を言われるのかと思って……」 「そんなこと、言うわけないだろ」 と呆れたように言ってから息を吐き出すと、彼は目元に手を当てながら続けた。 「悪かったな、勘違いさせて。 どう切り出していいか、分からなかったんだよ、プロポーズなんて」
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