渡る世間に鬼が笑う

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プロポーズ。 さらっと言われたワードの強さに気づいたのは、ワンテンポ遅れてからだった。 固まってしまった私をチラッと見て、恭介さんも気まずそうに俯く。 二人して、顔が赤いのは夜目にもわかる。 「その、あれだ。 俺としてはそれくらいの覚悟を持って……というかだな、くそ、まだるっこしいな!」 一人で何やら叫んでいたが、やがて彼は顔を上げた。 「琴音」 いきなり、グイッと腕をひかれて、私は真っ直ぐに彼の胸の中。 「は、はいっ」 「俺と結婚するよな?」 鬼はやっぱり鬼。 これじゃあ、イエスとしか言えないじゃないか。 でも私の気持ちは決まっている。 俺様だろうが鬼だろうが、本当は彼だって不安だという事はわかる。 だって、私を抱きしめている腕は震えているもの。 強気に見せかけても、本当は弱いところだってある。 それを私は彼といる事で学んだ。 以前は、自分の頭の中だけで恋をしようとしていたけれど、今は違う。 彼と向き合い、一緒にいる事で、私は色んなことを学べたんだ。 私は、ギュッと彼の背中に腕を回した。
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