渡る世間に鬼が笑う

15/15
前へ
/206ページ
次へ
「恭介さん、私と結婚してください」 後になって彼は、プロポーズをしたのは私からだと言うようになった。 子供たちも、私からお父さんを捕まえに行ったのだと思っている。 だけど本当は知っているのだ。 彼が、きちんとプロポーズをし直したかったと思っている事を。 私が申し込む形の「プロポーズ」をしたのが、悔しかったんだろうな。 いつか、もう一度言ってくれたらいいなとは思うけれど、照れ屋の彼にはハードルは高いだろう。 今はせいぜい、”月がキレイだな”が精いっぱいに違いない。 でもそれでいい。 最初はお互いの名前すら聞けなかった私たちが、ここまでこれたんだから。 きっとこれから、もっと気持ちの伝え方を学んでいけばいいんだ。 完
/206ページ

最初のコメントを投稿しよう!

147人が本棚に入れています
本棚に追加