ふたりの夫、ふたつの生活。あったかもしれない、もう一つの人生

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 ところが、湾岸のマンションで、またも引っかかる。スイカが冷蔵庫に切って、仕舞われていたのだ。祐子は普段、丸ごとのまま常温保存し、食べる2~3時間前に切って、冷蔵庫に保存していた。圭一郎によると、2人暮らしだから、スイカを丸ごと買うことはそもそもないと一蹴されてしまう。きっと彼の言う通りなんだろう。でも、切り方も彼女のとは違うのだ。思い返すと、クローゼットの服も細身だった。  もしかして、ユウコさんは別にもう一人いるのか? この生活は夢ではなく、現実なのか......?  祐子は思い切って、金曜の日中、駅の北口にあるうちへ行ってみる。車の中からうちを見上げると、洗濯物が二階のベランダにきちんと干されていた。庭の生垣越しにリビングを覗くと、彩佳がソファに寝そべって、タブレット端末を見ている。どうせ、いつもの恋愛バラエティーなんだろう。「マジ!?」と突っ込んだり、「キュンキュンするぅ」と悲鳴を上げたり、賑やかである。どうやら、うちの中は彼女一人のようだ。息子の翔平は部活で、夫の和孝は仕事なんだろう。いつもの光景に、祐子は少し安堵する。  次は実家だ。車を実家近くのスーパーの駐車場に止めて、徒歩で向かった。 「ユウコサン! ユウコサン!!」  家の中から義母の声が外まで聞こえてくる。そして、それに応えるかのように、誰かが「は~い!」と声を上げる。一体、その声の主は誰なのか。私か? それとも......? 祐子は庭に干された洗濯物の間から、実家のリビングを覗くと、義母が呼ぶユウコサンが現れた。 「この人が......?」  ユウコサンは祐子ではなかった。祐子と同じ年齢くらいの細身の女性だった。薄化粧にしているが、生来、持つ華やかさは隠せない。湾岸のマンションのクローゼットにある服がとても似合うと思った。あの人がユウコさん......。 「こんなところで、何をやってんだ?」  祐子はビクッとして振り返ると、そこには義父が立っていた。 「お義父さん。あの人は......」 「それより、大丈夫なのか。ご実家の親父さんは?」  祐子はその日の夕方、夫・和孝の会社を訪ねることにした。黄色いラインの電車に揺られるのはどれくらいぶりだろう......。車窓に映る景色を見ながら、義父と公園で話したことを思い出す。
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