門の向こう側

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「最後くらい思い切り歩かせてあげたいものね……」  僕は恥ずかしくなった。話しながら女性と一緒に歩いて、彼女の職場の前で別れをした。 「もしいつか動物を飼う時があったら、できればうちから引き取ってね」  寂しげに笑った女性は、犬たちを引き連れ門の奥へと歩いていった。彼らは名残り惜しそうにしっぽを振ってこちらを見たが、女性の言うことを素直に聞いて保健所の中へ消えていったのだった。  ――夏を迎えるたび、今でも僕はあの日のことを思い出す。
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