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第5話 好きか
家出から帰って来た亜生君は、ちょっとだけ変わった。
「もう洗濯物、取り込めよ。」
「はいはい。」
仕事から帰って来たそうそう、一息つく暇もなく、亜生君に指示される。
今までは学校が終わっても、夕食の時間に帰ってきていたのに、最近は夕方に帰ってきている様子。
「あっ、今日お風呂洗わないと!」
「もう洗っておいた。」
私が隣を見ると、亜生君が一緒に洗濯物を、取り込んでくれている。
「ありがとう。なんか最近、優しいね。」
「別に。俺の家でもあるんだから。」
照れた表情が可愛い。
「もう少しで壮真が帰ってくるから、夕食作らないと。」
「手伝うよ。」
亜生君は、一緒にキッチンに入ると、慣れた手でお米を研ぎだした。
「施設でもやってたの?」
「たまに。」
そう言うと、炊飯器にお釜を入れる。
私が教えた訳でもなく、ピッピッとボタンを押している。
私が新しく買った物なのに、扱い方で先を越されるとは。
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