2人が本棚に入れています
本棚に追加
面倒臭い乍らもそこに電話すると、さっきクリニックの受付嬢に説明した内容を丸々復唱させられ、更に幾つもある質問に答えていく。
案の定というか、決まって受話器の向こうから
「感染の可能性は極めて低いですね。クリニックへの受診はご本人にお任せします。」
と、若干晴れやかに言われる。
三度目くらいには、声でバレてるのか、すっかり馴染み化した様子で
「食後は体温上がるって言いますしね。いや、今回も違うようで良かったです。」
『……いや、良くねぇし。自宅待機だし。給料減るし。』
心の中でそっと突っ込んでやった。
そう、例え何も無くても三日間の自宅待機だ。
待機中も一日数回の検温と体調の報告が義務で、それもオマケのひとつである。
自粛解除後に仕事が再開してから、僅かニカ月半の間に六回、定休日を除いて、延べ十八日間の欠勤。
こうして、理由も判然としない発熱に踊らされ、あっという間に収入も職場の上司やスタッフの信用も失い、ただでさえ不安定な私の生活はつるべ落としさながらに、闇の底なし沼に沈んでいった。
そして、後に出会う若僧に
「つるべ落としって何~。」
と、暗に年寄りだといった発言を喰らうのである。
最初のコメントを投稿しよう!