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それから大狐は、決まって毎日午前十時くらいにやって来た。
毎日違う服を着て、合わせるようにヒールの高い靴を履いて…懲りていないないのか、ファッションに対するポリシーなのか。
後者だとすれば、そのブレない信念は天晴れである。
大狐は、来る日も来る日も甲斐甲斐しくイヤな顔ひとつせず、寧ろ嬉しそうに私の世話を焼き、残りの時間は相変わらず幸せそうにブラピもどきの話しを延々として仕事に行く。
そんなほのぼのとした日常が続く。
何日も。
大狐は、驚くほど人懐っこい上に、癒し上手で聞き上手だ。
話していて心地いいと感じる。
きっと、これも天性のモノだ。
誰でもあっという間に警戒心など解かれてしまうように語り、語らせる。
共有する時間が増すほどにお互い気心が知れ、会話の内容も次第に深さを増していった。
悩みの相談をされたり、お洒落や美容の話をしたり、好きな食べ物からオススメのお店やお気に入りのバル、お互いの昔話や初恋談議で盛り上がったりもした。
最終的には、初めて会った時のゴージャスな狐の話しもバラすくらいに打ち解けていった。
今では、一応『大狐』は公認だ…たぶん。
「やダァ。止めてぇ。」とは言ったが、目が優しく笑っていた。
距離を縮めるほどに、見た目の派手さとは裏腹に、真面目で純朴な部分が浮き彫りになり、同時にあの時の危うさが何度もぶり返す。
その度に、オバ友(オバさんの友達)の老婆心が発動しそうになるのを、これもまた何度も堪えた。
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