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第14話 ≠恋人
綾芽は少し生温い海水に足を浸けながら、横目でチラリと青葉の方を眺めた。
俊介は昔に行った旅行の話をしている。相槌を打ちながら話を聞いているものの、心のどこかで青葉の真意を探ろうとしていた。
借金のことを伝えられたのはよかったが、彼が気にして誘われなくなったら大変なことだ。だからつい、海に誘ったのだが────。
少しは自分のことを好きでいてくれているのかもしれない────。
ほんのり期待を抱いてデートに来たものの、前回イベントに誘われた時より青葉は大人しい。いや、これが普通なのかもしれない。
海に行くということで綾芽はかなり下調べをした。格好は動きやすい方がいいとネットに書いてあったし、前回ワンピースだったのであまり色目を使った格好にすると普段の素行を疑われかねない。
折衷案で今回のような格好になったのだが、青葉の反応は薄い。もっと可愛い格好の方がよかったのだろうか。
だが、道中会話は弾んだし、今も楽しく浜辺を散歩しているところだ。昔の話は出たものの、暗い雰囲気ではない。
────青葉さんは、私以外の女の子もこういうところに連れて来たりするのかな。
車に乗せるのも特に抵抗がなさそうだった。集団ならともかく、二人で海に行くなんて普通は気がなければしないだろう。
それらしい言葉も、プレゼントまで貰っていて、これで気がなかったら驚きだ。
だが、青葉は真面目だ。今までのことも、自分のことを気の毒に思ったから、その礼儀正しさ、親切さゆえにそうしてきただけだと考えることもできた。
もし本当にそうなら紛らわしい態度を取らないでと怒りたいところだが、それが発覚するのは失恋する時だ。容易に確かめることはできなかった。
海に行った後は近くにあった店で食事してドライブした。都会のような行動パターンは取れないが、青葉とゆっくり話す時間が取れたのは嬉しかった。
デートはいい雰囲気のまま何事もなく終わった。青葉は最寄りの駅まできちんと送り届けてそのまま帰った。
何事もなく終わったことに少しガッカリしながらも、それは青葉の真面目さゆえだと自分を納得させた。海にまで行ってなにもないとは思わなかったが、青葉はいきなり事を進めるような男ではない。
けれど、あまりにもエスコートが手慣れすぎていて女性の存在を疑ってしまう。青葉は女性と付き合ったことぐらいあるはずだ。彼ほどの男に彼女がいなかったわけがない。会社にだって言い寄ってくる女性がいるかもしれない。
考えていると嫌な想像ばかりしてしまう。だが、考えたところで無駄だ。どちらにしろ自分にはそれに口を出す権利などないのだから。
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