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翌朝、青葉は綾芽に会いにコンビニへ向かった。
いくら考えたところで不安は消えることはない。それならもっと自信がつくように行動すべきだと思った。
少しでも綾芽と話して接点を持たないと、ただでさえ会う時間が短いのだ。あのバイトの青年に張り合おうと思うのならそれぐらいすべきだ。怖がっている場合ではない。
綾芽は朝から働いていた。そしてあのバイトの青年は休みなのか、姿は見当たらなかった。俊介はここぞとばかりに綾芽に話しかけた。
「おはよう」
綾芽は朝の品出しをしていたのか、座って商品を陳列していたが、顔を上げて少し驚いた。
「あ、青葉さん……っ。おはようございます」
「朝ごはん食べそびれたんだ。そこから取っていいか?」
「あ、はい」
綾芽は腰を上げてさっと避けた。
本当は朝ごはんを作れる時間帯に起きていたが、そんなものは口実だ。綾芽に会いたいと思うなら、わざわざ朝食を食べてくる必要はない。コンビニがまだ空いている少し早めの時間帯にきて綾芽と話せばいいのだ。
もちろん彼女は仕事中だから長話はできないが、一言二言ぐらいなら許容の範囲内だろう。
俊介はサンドイッチと野菜ジュースを手に取った。綾芽はすぐにレジに向かった。
「この間は悪かった。ちょっと仕事でゴタついてたんだ」
「いえ……あの、青葉さん」
「ん?」
「昨日────」
「昨日?」
「……いえ。なんでもないです。私のことは気にしないでください」
綾芽は袋をずいっと前にやると、慌ててペコリと頭を下げた。
「立花さん、今日は夜までずっと仕事か?」
「……はい。そうです」
「そうか……もしまた空いてる日があったら、一緒に夕飯食べに行かないか。立花さんが好きそうな店を見つけたんだ」
「ありがとう、ございます。でも私なんかと行くより────」
「立花さん、おはようございます」
レジの後ろの入り口から出て来たのはあの萩原という青年だった。今日はシフトが入っていたのか、俊介は思わず嫌な気持ちになった。
萩原は綾芽が接客中だと気が付いたのか、青葉に向かって「いらっしゃいませ」と軽くお辞儀した。
「立花さん、バックで店長が呼んでますよ。先月のシフトのことがなんとかって言ってました」
「え? シフト? そう……じゃあ、青葉さん。すみません」
綾芽は頭を下げて足早に店の奥へと消えていった。萩原は綾芽の代わりにレジに立った。
俊介はなんだかモヤモヤした気持ちのまま店を後にした。
────避けられた? 気のせいか?
綾芽は何か言いたげだったが、一体何を言おうとしていたのだろう。タイミング悪く萩原が来たせいで聞けなかった。
それになんだか元気がないように思えた。以前はもっと違った。自分が会いに行けば嬉しそうにしていたし、もっと笑ってくれていたはずだ。
わずかばかりの自信はこんなことで簡単に崩れていく。嫉妬を前に綾芽との思い出など無意味に思えた。
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