セツナラセン ~ 黄昏色のゼリー ~

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「うん。多分、いいと思う。念のため、この曲を作った子に聞いてみるけど」  ナツは、歯切れ悪くそう答えた。曲はナツの友達の自作らしい。ナツは昔から、私のお願いを穏やかに受け入れてくれる。『男子』感があまりないからか、ナツは私にとって同性の親友みたいな存在だ。 「じゃあ、その子にオッケー貰えたら連絡するよ」  ナツは言いながら立ち上がって、病室を後にした。  ナツが帰ってからすぐに、ベッドの脇にある小さな冷蔵庫の扉を開けた。中には、たくさんのフルーツゼリーが所狭しと並んでいる。  フユト君がお見舞いに来る都度、私に買ってきてくれたものだ。  2回目に会った時に、「熱が出るといつもゼリーを食べて治ったから、アキちゃんにも」って言われて、可愛い人だなと笑ってしまった。3回目は緊張してあんまり話せなかった。4回目に「近くまで来たから」って彼が顔を出してくれたときには、心がふわっと浮き上がるくらいに嬉しかった。  コンビニの袋に入ったゼリーを彼から受け取るたびに、どんどんと甘さを増していった私の想い。色鮮やかなゼリーは、狭い箱の中でいつの間にか積み重なり、もう入りきらないくらいだ。
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