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ガサガサ。
翼たちは誰一人言葉を交わさなかった。
緊張からか、それとも疲れからか。
元気が取り柄の葵衣でさえ無言だった。
彼らは早く湖に着きたかった。
この空気感が窮屈に感じられた。
翼「……着いた」
翼たちは目的の湖に到着した。
その湖は大きく、まるで吸い込まれてしまうようなほどの存在感があった。
秋「……それで、何処に『赤マント』がいるの?」
翼「……何処だろう」
翼たちは途方にくれた。
?「お前さんたち、そこで何しとる?」
翼「!?」
後ろから聞こえた声に翼たちは驚いた。
振り返ると、白い髭を貯えた老人が立っていた。
翼「あ、あの、 僕たちは……」
老「お前さんたちも『赤マント』とかいうのを見に来たんか?」
翼「え!?」
老「だったら悪いことは言わん。今すぐ帰った方がええ」
翼「あ、あの。『赤マント』のことご存知なんですか?」
老「……数ヵ月ほど前から『赤マントが出る』言うてバカな若モンたちがここに良く来るようになった。酷い時は火まで焚いて夜通しするモンまでおったわい」
翼「……それで、『赤マント』は出たんですか?」
老「実際に見たやつはおらん。……じゃが、ワシは1回だけ見たことがある」
翼「!?」
老「あれは人間じゃねぇ。質の悪いあやかしの類いじゃ。ワシは長いことここに住んどるから分かる。あれに関わったら録なことにならん」
翼「……」
老「お前さんたちも諦めて帰った方がええ。ここは暗くなると危ないからの」
老人はそう言うと去っていった。
須「……本当かね? あのじいさんの話」
白「嘘をつくような人には見えなかったけど……」
秋「……何か嫌な予感しかしないんだけど」
上「どうする? 翼」
翼「……もう少し待ってみよう」
翼たちはここで少し待つことにした。
空は相変わらず雲がかかったままだった。
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