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翌日、翼は保健室で自作の弁当を食べていた。
ガララ。
姫「失礼しま~す……」
翼「あ、姫愛。どうした?」
姫「翼くん。今大丈夫?」
翼「うん。今日は誰もいないから」
姫「そうなんだ。じゃあ……」
姫愛はゆっくりとドアを閉めて中に入った。
姫「……昨日、俊介から電話があったんだ」
ピク。
姫愛は嬉しそうにそう言った。
翼「へぇ~そうなんだ。それで何だって?」
姫「それが……事件のことで話があるって」
翼「事件って、井上利樹の話のこと?」
姫「あれ? 知ってた?」
翼「昨日会ったんだ。それで話を聞かれた」
姫「そうだったんだ。……あの、翼くん」
翼「ん?」
姫「俊介、私のことなんか言ってた?」
翼「……いや。でも元気にしてるかは聞いてきたよ」
翼は咄嗟に嘘をついた。
姫「!!……そっか」
姫愛はそう聞いて嬉しそうに笑った。
翼はそれを見て胸が締め付けられた。
翼と姫愛は中学生の頃からの友人である。
俊介も加わり、いつも3人一緒だった。
高校生になってもそれは変わらなかった。
だが、翼の中ではそんな関係に嫌気が指していた。
翼は姫愛に恋愛感情があった。
しかし、翼は気付いていた。
姫愛が俊介に恋していることを。
翼「(俺の気持ちは彼女には届かない……)」
翼は姫愛への想いを心の奥に仕舞い込んだ。
そして、姫愛の恋を応援することにしたのだ。
姫愛が出ていったあと、翼はコーヒーを飲みながら天を仰いでいた。
翼「……ふぅ」
姫愛への愛は捨てたつもりだった。
しかし、翼は未だに気持ちを捨てられずにいた。
彼女の笑顔を見るたび、翼の胸は締め付けられた。
翼「……」
外ではしゃぐ生徒たちの声が、静かな保健室に響いていた。
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