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翼「……うん。分かった。うん。じゃあ」 翼は電話を切った。 電話の相手は浩一だった。 繁が殺されたこと、優太が亡くなった湖に行く予定を早めた方が良いということだった。 翼「……」 翼は机に置かれた紙を手に取った。 『臨時休校のお知らせ』 紙にはそう書かれていた。 須藤大樹が襲われた動画が流れたこと、そして週刊誌にいじめッ子グループの過去が掲載され、その彼らが殺されたことで学校はパニック状態になっていた。 『赤マントはいじめっ子を殺す』『お金持ちは赤マントに殺される』『イケメンは赤マントに呪われる』など、『赤マント』のデマが学校中に出回った。 それによって「学校に行きたくない」と登校を拒否する子が複数出てきた。 それだけでなく、その噂を信じ子供を学校に行かせない親も少なからず出てきたのだ。 馬鹿げた話だが、実際『赤マント』を模倣した通り魔事件が起きたり、『赤マント魔除け』として、赤い物を身に付ける生徒や赤いスプレーで落書きをする生徒も出てきた。 一部の教師も同じように赤い物を身に付けるようになった。 学校は生徒の安全を考え、3日間の休校を決めた。 というのは建前で、実際は一部の過激な生徒・親に対する対策と、噂話が忘れられるまでの時間稼ぎだろう。 どちらにしろ翼には好都合だった。 『赤マント』のことが頭から離れず、仕事に集中できないことが続いていた。 何かと理由を付けて、学校を長期で休もうかと考えていたところだった。 翼「あんまり休むのは気が引けるからな。これで気兼ねなく京都に行ける」 翼は内心ホッとしていた。 ガラッ。 姫「翼くん」 翼「姫愛」 姫愛がやって来た。 その表情は心無しか、元気がないように見えた。 翼「大丈夫? 何か疲れてない?」 姫「うん。ちょっと騒ぎがあったけど、直ぐに収まったから」 翼「臨時休校のこと?」 姫「生徒の親の1人が教室に乗り込んできちゃって。『私の子供は悪いことなんてしてない!! なのに何故学校を休ませないといけないの!?』って」 翼「臨時休校ってPTAでも話し合いで決まったことじゃなかった?」 姫「まぁ、そうなんだけど。その親共働きみたいで。子供が休んだらその分お金がかかっちゃうんじゃないかって心配なんだと思う」 翼「まぁ、休校ってなったらじっとはしてないよな子供たちは」 姫「うん」 翼「姫愛は俊介の手伝いをするんだろ?」 姫「うん。何が出来るかは分からないけど」 翼「無理はダメだよ。2人ともお互いの為なら平気で無理するから」 姫「うん、気を付ける。翼くんも無理しちゃダメだよ?」 翼「俺は大丈夫。だってやっと2人と本当の友達になれたから。……絶対に失うようなことはしない」 姫「……そっか」 姫愛は翼に微笑んだ。
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