消えない寂しさ

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<翼 side> 翌日、俺はある場所を訪れていた。 翼「……誰も住んでないのか」 そこはかつて、俺が住んでいた家だった。 俺はドアに手をかける。 ガチャガチャ。 ドアには鍵がかかっていた。 翼「流石に開いてないか……」 俺は静かにその場を後にした。 翼「あっ……」 家を出て直ぐ、俺は電柱の貼り紙を目にした。 そこには、『この犬を探しています』と書かれていた。 翼「そういえば小さい頃、母さんと近所の犬を一緒に探したことがあったな」 仲良くしていた近所のおばあちゃんの飼い犬が居なくなり、母親と近所の住民と一緒に犬を探した。 母は貼り紙を作り、それを電柱に貼ったり、歩いている人に配ったりしていた。 数日後、その犬は自らおばあちゃんの家に戻ってきた。 それを聞いた母は、俺の顔を見て笑った。 俺は一緒に笑いあった。 その時には想像さえしていなかった。 そんな母が自殺するなんて。 母の自殺を聞いた時は驚いた。 俺はその時学校にいた。 母を発見したのは近所のおばあちゃんだった。 首を吊ったと聞かされたが、その時の記憶は定かではなかった。 母が亡くなったと聞いても、俺にはあまり実感が湧かなかった。 中学になって家を引っ越した時、ようやく母がいないことを寂しく思うようになった。 今になればなんて遅いことだろうと思う。 俊介は俺を元気付けようとしてくれた。 その中に姫愛が加わった。 毎日が楽しかった。 けど、寂しさが消えたわけではなかった。 翼「行ってみるか……」 俺はある場所を目指して歩きだした。
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