16人が本棚に入れています
本棚に追加
/176ページ
時を同じくして……。
俊介は姫愛と共に、葵衣が住んでいた商店街付近で聞き込みを行っていた。
卯「……」
姫「中々見つからないね」
卯「事件が起きてから結構経つからな。あの放火事件以降引っ越した人も多いらしいし」
俊介は手帳を閉じた。
捜査は暗礁に乗り上げていた。
卯「ん?」
しばらく歩いていると、俊介はお店を発見した。
卯「写真屋か」
そこは見るからに長いこと営んでいそうな写真屋だった。
外には結婚写真や昔の商店街の風景写真が飾られていた。
卯「聞いてみるか……」
俊介たちは店の中に入った。
卯「すいません」
?「はい?」
中にいたのは初老の男性だった。
俊介は事情を説明し、放火事件当時の写真が残っていないか聞いた。
男「その写真だったら多分父の部屋にあると思います」
卯「本当ですか!?」
男「はい。ちょ、ちょっと待っててください。直ぐ探して来ますんで」
男性はそう言うと慌てて奥に引っ込んだ。
男「その頃は親父が経営してたんですが、2年前に体調を崩しましてね。今は病院に入院してるんです。あ、これですね」
男性が取り出した写真には、確かに放火事件の時の日付が残されていた。
男「この時のことは父も良く覚えていたみたいで。『無我夢中で写真を撮った』って言ってました。それから直ぐに小久貫家の人間がやったんじゃないかってことになって、住人たちが毎晩のように小久貫家に抗議に行ったんです。けど相手にもされず、いつの頃からか抗議もしなくなって。そんな時に坪井議員が工事反対を申し出てくれまして」
卯「坪井庄吉……」
男「今この商店街が存続できているのは彼のお陰です」
卯「……」
姫「俊介、これ……」
卯「ん?」
姫「この人、小久貫君じゃない?」
卯「え……」
姫愛が指を差した場所を見る。
フードを被っていて分かりづらいが、それは確かに小久貫一真だった。
卯「何であいつが……」
男「そういえば、小久貫大臣の息子さん、良くこの商店街にやって来てたみたいです」
卯「え!?」
男「父の話によると良く悪さしてたみたいで、住民たちは彼のこと腫れ物扱いしてたみたいです」
卯「……他の写真も見てみよう」
俊介と姫愛は写真を隅々まで調べた。
最初のコメントを投稿しよう!