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一「ふぁぁ~……」
一真は大きく欠伸をした。
部屋の中に籠って1週間。
やりたいことは全てやりきってしまった。
一真はこの生活に飽きていた。
最初の頃は『赤マント』に怯え籠っていたが、今では『赤マント』に対する恐怖よりマスコミへ見つかるのが面倒だった。
一「誰かに変装道具でも買ってきてもらおうかなぁ」
一真は小さい頃から、父親からのプレッシャーを感じていた。
立派な官僚になること。
父の頭にはそれしかなかった。
成長するにつれ、一真はそんな宗一郎の思いが邪魔になった。
父への反抗心から、一真は悪さをするようになった。
しかし、宗一郎は直ぐ様隠蔽し、まるで何も無かったかのように一真に接した。
それが一真には余計に苦痛に感じた。
優太が失踪した時、宗一郎は一真に言った。
『私に任せておけ』
宗一郎は学校を辞めさせ、有名大学にコネで入学させた。
大学生活は一真にとってつまらないものだった。
集まってくるのは金目当ての人間ばかり。
一真を楽しませてくれる人間はいなかった。
それは社会に出ても一緒だった。
一真はそんなイライラを発散したかった。
いつも自分を除け者にする商店街の人間を困らせるために火を付けた。
しかし、思ったより火の回りが早く、あっという間に燃え広がった。
人が死んだことは後のニュースで知った。
そして、その死んだ人物が葵衣の両親だと一真が気付くことはなかった。
宗一郎は事実を隠蔽し、一真は何事も無かったかのように日々を過ごしていた。
そして、つい最近までその事をすっかりと忘れていたのだった。
ブーッ。ブーッ。
一真の携帯が鳴った。
番号は知らないものだった。
一真は電話に出た。
一「もしもし?」
『……』
電話の主は何も答えない。
一「あれ? もしもし?」
ブツッ。
何も言わず電話は切れた。
一「チッ。何だよ」
見ると、携帯にメールが届いていた。
アドレスは知らないものだった。
一「何だ?」
メールを開くと、動画ファイルが添付されているようだった。
一「?」
一真はファイルを開いた。
動画には、赤い絨毯が映し出された。
『カツッ……、カツッ……』
携帯越しに足音のようなものが聞こえる。
一「何だよこれ」
一真は動画を切ろうと指を伸ばした。
すると、動画の足音が止まった。
その画面には、血に濡れた手が映っていた。
一「あ?」
次にゆっくりと画面が動いた。
映ったのは、目を見開いて倒れている男性の姿だった。
一「うわぁ!?」
一真は携帯を投げ捨てた。
一「な、何だ今の」
一真は恐る恐る携帯を開き、画面を見た。
そこには変わらず男性の死体が映っていた。
一「コイツって……」
一真はその男性に見覚えがあった。
宗一郎の秘書で、先ほどマスコミ対応に向かった人だった。
一「!? このカーペットの色。もしかして……」
一真はベットから出てドアへ向かった。
一「……」
ガチャ。
一真はゆっくりとドアを開けた。
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