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キーンコーンカーンコーン……。
女1「えっ!? 告白断ったの!?」
女2「うん」
女3「なんで!? 坪井先輩イケメンで有名なんだよ!?」
女2「だってさぁ……。あの人チャラいじゃん。なんか偉そうだし」
女1「あぁ~、確かに。有名会社の社長なのを花にかけて好き勝ってやってるって聞いたことあるわ。学校も多額の援助金? っての貰ってるから、なにも言えないんだって」
女2「うちの知り合いの子も何人か声かけられたって聞いたわ」
女3「えぇ~……。でも金持ちだよぉ。多少は我慢できそうじゃない?」
女1.2「えぇ~…」
東京にあるとある高校。
そこの保健室で3人の女子が大声で話をしていた。
ガララッ。
?「お~い。お前らいつまで残ってんだ。もう放課後だぞ」
女1「あっ、しっちー!! オッス~」
女2「オッス~」
?「せめて『先生』を付けろよ…」
七咲翼(ななさきつばさ)は呆れた顔で中に入った。
彼はこの高校の保健医で、女性のような名前をしているがれっきとした『男』である。
名字の七というから漢字から『しっちー』という愛称で生徒から親しまれている。
翼「お前らさっさと帰らないと暗くなるぞ」
女1「だって家に帰っても暇なんだもん」
女2「そうそう、親はうるさいし」
女3「他の先生はうちらのこと白い目で見るし」
女1「しっちーと姫ちゃんくらいだよ。私たちと普通に接してくれるの」
翼「……」
この学校には不良や不登校児が多い。
そのためか、教師の生徒への対応が厳しいことがある。
翼も高校生の頃、同じような環境にいたことがあった。
そのため、この子たちのような行き場のない生徒の気持ちが少しばかり理解できた。
翼「だからって毎日毎日ここにいたら他の生徒が使いづらくなるし、俺も仕事ができないだろ」
女1「しっちーって仕事あるの?」
女2「なんかコーヒー飲んでる印象しかないけど」
女3「うんうん」
翼「あるわ!! お前たちがいるときは仕事しないようにしてるの」
女2「へぇ~」
翼「ほれほれ早く帰った帰った。寂しくなったら明日また来ていいから。ただし、あんま大声で話すなよ。他の生徒の迷惑になるから」
女1「は~い」
女2「じゃあねしっちー」
女3「また明日ね~」
翼「気を付けて帰れよ~」
女子生徒たちは帰っていった。
翼「…ふぅ」
シャーッ。
翼はカーテンレールを開けた。
ベッドには女子生徒がいた。
翼「親御さんとは連絡取れたか?」
?「……」
女子生徒はゆっくり頷いた。
翼「悪いな。煩かっただろ」
?「…大丈夫。もう慣れた」
翼「ハハハ……」
翼は苦笑いを浮かべた。
彼女は音無玲穏(おとなしれのん)。
自傷癖があり、1年の頃から保健室登校をしている。
クラスの中でも彼女のことを知っている人は少ない。
学校の送り迎えは彼女の母親がしており、その間翼は彼女の話し相手となっている。
翼「どう? 体調は」
音「普通……。でも最近はリスカもしてない」
翼「そうか……」
翼はコーヒーを作りながら玲穏の話を聞いていた。
音「……最近、お母さんあんまり喋らなくなったの。前は良く話しかけてくれてたのに」
翼「…」
音「……私のこと、めんどくさくなっちゃったのかな」
翼「……まぁ、毎日送り迎えして料理作ったり、世話してたらそりゃ疲れるよな」
音「……」
翼「でも、まだ君のお母さんはまだ君のことを嫌っていない。嫌ってたら送り迎えなんてしてくれないだろ?」
音「……」
翼「まだやり直しはできるよ。君に変わろうという意思があれば」
音「変わろうという意思……」
翼「まぁ、そんな直ぐには無理かもしれないけど。ちょっとずつで良いと思うよ」
音「……努力する」
翼は玲穏にコーヒーを渡した。
玲穏は冷ましながらゆっくりとコーヒーに口をつけた。
音「……美味しい」
翼はコーヒーを飲みながら落ち着く彼女を見て優しく微笑んだ。
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