幼馴染みの警察官

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学校終わり、翼は近くの居酒屋に来ていた。 ?「翼!! こっちこっち!!」 翼「悪い。待たせちゃって」 ?「大丈夫大丈夫。仕事柄待つのは慣れてるから」 彼を笑顔で出迎えたのは、小学校からの友人である卯野崎俊介(うのざきしゅんすけ)だった。 翼、卯「かんぱ~い!!」 2人はビールをグッと飲んで乾いた喉を潤した。 卯「プハ~ッ!! うめぇ!! ……んで、どうよ最近仕事の方は?」 翼「実家に久しぶりに帰った息子にするみたいな質問だな。……まぁ、忙しいよやっぱり。最近は不登校になるやつが増えてってるから」 卯「不登校ねぇ……。俺たちの頃は学校に行くのが楽しみで仕方なかったけどなぁ」 翼「今は学校も親も煩いからね。学校が煩わしくなる気持ちもちょっと分かる気がする」 卯「……そんなもんかねぇ」 2人はしんみりしながらビールに口をつけた。 翼「そっちはどうなの。俺より忙しいんじゃない?」 卯「まぁ、急がしいっちゃ忙しいけど……」 俊介は捜査一課の刑事をしている。 署内では「イケメン刑事」として女性に大人気である。 卯「なぁ翼。井上利樹(いのうえとしき)って覚えてるか?」 翼「井上利樹って中学の時の? もちろん覚えてるけど…」 井上利樹。 翼たちが中学の頃のクラスメイトである。 いじめっこグループの1人であり、悪ガキとして有名であった。 卯「……昨日、変死体で見つかったんだ。殺人だ。鋭利な刃物で首を横一文字に切られてた」 翼「え……」 卯「……それに、井上じゃないんだ。中学の頃にアイツとつるんでたいじめっこグループの仲間が2人殺されてる。しかも同じ手口で。一課じゃ同一犯の犯行として捜査してる」 翼「同じ犯人……」 卯「……それで昔の同級生に話を聞いてるんだ」 翼「なるほど。それで俺を呼んだわけか」 卯「いや、そういう訳じゃないんだ。お前が犯人なんて思ってないし。ただお前に聞きたいことがあって……」 翼「アリバイとかなら、俺一人暮らしだし皆より早めに仕事あがるから証明できる人いないけど……」 卯「あ、犯行時刻は21時過ぎの犯行だからほとんどの人がアリバイがない状態なんだけど。聞きたいのはそこじゃないんだ」 翼「?」 卯「上坂拓実(かみさかたくみ)の居場所について聞きたいんだ」 翼「拓実の?」 俊介が訪ねたのは上坂拓実の居場所についてだった。 拓実は教育実習生時代、翼と一緒に実習生として働いていた人物である。 翼「何で拓実の、っていうか何で俺が拓実の知り合いだって……」 卯「彼の部屋に実習生の時の写真があった。それにお前も写ってた」 翼「……そういえば実習最後の日に一緒に写真撮ったな」 卯「井上が殺される2日前、彼は井上とファミレスで会ってるんだ。店員の話では揉めていたらしい。何が理由かは分からないが、スゴい剣幕だったと言ってた。そこからの彼の足取りが掴めないんだ」 翼「揉めてた……。あの拓実が」 拓実は実習中、常に笑顔を絶やさなかった。 授業が終わったあとでも生徒に積極的に関わり、授業も上手かった。 実習中の彼の人気は凄まじいものだった。 誰かと揉める姿を、翼は想像できなかった。 卯「……それで、どう?」 翼「……ごめん。実習が終わったあと何回か会ったことはあるんだけど、1年前から仕事が忙しくなって、それ以来お互い連絡も取ってないんだ」 卯「そっか…」 翼「学校は? 社会科担当してるって聞いたけど」 卯「数ヵ月前に退職してる」 翼「退職……」 翼は拓実の笑った顔を思い出していた。 翼「(あんなに好きだった教師の仕事まで辞めるなんて……。何があったんだ)」
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