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「えっと・・・
・・・とりあえず君は落ち着いて・・・、エルジオは何処に?」
「・・・父は・・・つい最近亡くなったんです」
俺の言葉を聞いた貴族は、驚いた様子で固まってしまった。つまりこの貴族は、父の死を全く知らなかったという事。
そう考えると、父の墓参りに来たわけでもなさそうだ。
昔村長から聞いた。
「貴族は滅多に外へは出ない。やむを得ない場合にしか姿を現さない。野暮用
などは殆ど使いが代理でこなしている」
と。
つまり、この貴族は自らこの村に来る程の道理があったという事。でもその理由が父の墓参りではないとなると、ますます来た理由が分からなくなる。
俺の哀れな姿を見て、助け舟に来てくれたのは、パニエッテンの村長。村長が外に出ると同時に、近所の人が混乱する俺を抱え、家まで運んでくれた。
頭が思考の熱さにやられてしまったけど、水を飲んだらある程度回復した。俺はひとまず、ベッドに腰を下ろす事に。
俺と貴族とのやり取りは近所の人も聞いていたらしく、村人全員で色々と話し合っている様子。
正直、このまま布団に潜り込み、夢の中に逃げてしまいたい気持ちがあったけど、あの貴族が帰らない限り、安心して眠る事なんてできない。
俺がため息をつくと、村長が家のドアをノックする。どうやらその貴族は、俺と話があるらしく、村長の家を借りて話し合いをするそう。
行きたくない気持ちもあったけど、色々と確かめなくちゃいけない事も山積み状態。俺は腹を決めて行く事にした。
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