第六章 突然の訪問

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第六章 突然の訪問

俺は『馬車』なんて見た事がない。そんな金持ちの乗り物を、こんな田舎村では絶対に見られない。絵本でしか知らない物だ。 絵本で見た馬車は、確か・・・馬を二匹以上使って、車輪付きの箱を移動させる乗り物。『灰ノ姫』という絵本に出てきたのを覚えている。 そもそも村に馬なんていない。商品を売り出す町では時々見かけるけど、それを何匹も引き連れるだけでも、相当の権力と財力の持ち主である。 父から話を聞いたけど、馬を飼う為には、ある程度の地位と財力が認められないと飼えないそう。 馬を放牧する為の広い土地に加え、毎日のエサ代も必要になる。1日1日を生きるお金だけで精一杯な俺達にとっては、まさに『幻獣』とも呼べる存在。 しかも貴族の馬車となると、馬車の装飾や内装も凝っているに違いない。村の人達が、一斉に家の中へ逃げ込むのも頷ける。 俺もとりあえず店は閉めず、家の中に待機する事にした。窓を少し開け、外の様子を確認しながら。 外の様子を見ていると、遠くの方で、「パカッ パカッ パカッ」という音が聞こえ、俺は身を震わせた。そんな音、聞いた事なんてなかったから。 音に恐怖しながらも、薄めで外を見る俺。そして、その音の正体が村に入って来た途端、俺は声をあげて驚いてしまった。
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