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第七章 ジュチル・S・ハイン
「あぁ、自己紹介が遅れたね
私は『ジュチル・S・ハイン』
ハイン家の18代目だ。都市の方で邸を構え、貿易や商業を取り仕切ってい
る
そういえば、まだ君の名前を聞いてなかったね」
「俺は、『エルバード』
皆からは『エルバ』って呼ばれているんで、そっちの方で呼んでいただける
と・・・」
ジュチルさんはニコニコしながら俺に話しかけてくれるけど、俺はまだ冷や汗が滝の様に流れ出ていた。
村長さんから出されたお茶を持つ手すらおぼつかず、口にうまくカップを運べない。
それにしても、貴族の服装というのは、一目見ただけでも圧巻だ。上着・ズボン・靴・シャツ・装飾品、その全てに隙がない。
装飾品を一欠片売っただけでも、パニエッテンにある家全てを建て替えられそう。
俺はなるべくその装飾品を見ないように、遠くを見ながらジュチルさんと話を進める。
「実はね、私が此処にやって来たのは、君のお父さんを説得する為だったん
だ」
「『説得』って・・?」
『都市に戻って来てほしい』・・・とね」
いきなり分からない単語が二つも飛び出た。
都市?? 戻って来て??
俺は思わず、隣に座っていた村長の顔を見た。すると、何故か村長も驚きを隠せない様子。
俺達が混乱している様子から、何かを察してくれたジュチルさんは、もっと詳細な事柄を教えてくれた。
「君のお父さんはね、昔は相当地位のある『学者』だったんだよ
十数年前のある日、私は君のお父さん、エルジオにとある仕事の依頼をした
んだけど、完成目前で姿を眩ませたんだ
私も懸命にエルジオを探して、ようやくこの場所を見つけたんだ。でもまさ
か、もう亡くなっているとは・・・」
「・・・事故でした。屋根の修理をしていたら、そのまま足を踏み外し
て・・・」
・・・つまり、簡単にまとめると、
父は『元』・学者だった
父はエルジオさんに仕事の依頼をされた
でも父は何故か途中で放棄して、この村へ来た
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