第一章 父からの教え

2/2
前へ
/233ページ
次へ
まぁそんなの、滅多にない事だけど。そもそもこの村から出るだけでも、危険と隣り合わせだから。それに相当体力が必要になる。 かなり広い森だから、モンスターがうじゃうじゃ住み着いているし、盗賊がいないとも限らない。 城下町へ品物を売りに行く時には、必ず武器を持った村人を一緒に同行させる程。 その武器自体も、そんなに優秀ではないんだけど、ないよりはマシ。そもそもモンスターや盗賊を見つけた際には、ゆっくりとその場を離れるのが鉄則。 自ら相手に喧嘩を売るような真似をすれば、品物どころか命も奪われかねないから。 村には医術を持っている人なんていない。かすり傷とか打撲になら対処できるけど、骨折やら病気やらを治療できる人も、治療できる施設もない。 ちゃんとした医者に診てもらう為には、森を抜けないといけない。それだけでも相当危険な事。だから村民達は、いつも健康に気を遣っている。 そして、森に生息している草木の、どれがかすり傷に効いて、どれが火傷に効くのかなど、知っている人は知っている。俺もその一人。 でも、そもそもこの知識の殆どは、父から教わったもの。俺は昔から危なっかしい性格だったから、怪我も絶えなかった。 父はそんな俺の為に、薬草の知識、応急処置の知識などをを教えてくれた。 木の種類によっては、包帯と傷薬の役目を果たす物。雑草の種類によっては、使い方で料理のスパイスになれる草も教えてもらった。 そして父は、こんなアドバイスをくれた。 「エルバ、今度は自分でやってみなさい  誰かが怪我をした時には、自ら進んで助けに行きなさい。その知識は、お金  には変えられないからね」 その言葉通り、俺は父から教わった知識をふんだんに生かし、村人達の支えになるように努力した。 そのおかげか、静かな田舎村での暮らしに退屈を感じない、楽しくて穏やかな生活が送れた。 村に住む子供達からは好かれ、大人達からはお手伝い要員として重宝される。 村の中での仕事の他に、村の外への商品を送る荷運び、村長の大切な手紙を町に届ける配達員など。 俺は日々、色んな仕事を受け持ってはおこぼれを頂戴していた。ただ、この村にはお金がそんなに流通していない。 というか、お金を使うような場所がそんなにない。だからおこぼれといっても、お金ではなく物。 それこそ村では手に入らない品だったり、村の外で流行っている品など。でも俺的には、食べ物の方がありがたい。
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加