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父が亡くなったのは、1ヶ月程前。過労でもなければ、病でもない。
近所の屋根を修理している最中、足を滑らせて、そのまま落下した父は、身体中を強く地面に打ちつけてしまった。
こんな田舎に病院なんてない。医者に診てもらう為には、荷車に父を乗せ、危険が蔓延る森を抜けないといけない。
運悪く、その時は土砂降りの雨が降っていた。だから町に行きたくても、行けない状況。
突然の土砂降りに驚き、川で魚釣りをしていた俺が村へ戻ると、村長が息を切らせながら俺に事情を伝えてくれた。
幸い意識はまだあったんだけど、全身が痛々しい姿に成り果てていた。でも父は、それほど苦しんでいる様子を見せていなかった気がする。
むしろ、大粒の涙を流す俺に、父は優しい言葉をかけてくれた。
「お前はもう、この村で十分幸せに暮らしていける。どうかこれからも、お前
の未来に、静かな平穏ががある事を・・・」
その言葉を最後に、父は静かに息を引き取った。
この村での葬式は、村民全員が参列する。皆が父の為に涙を流し、俺に励ましの言葉をかけてくれた。
「しばらくおばさんの家で一緒に住む?」
と、提案していた近所のおばさん、
「雑貨屋さんなくなっちゃうの?」
と、悲しげな顔で俺を見ていた子供達。
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